第二話
大通りはいつも人で賑わっている。
しかし大半の人が表の大通りを歩いている中、
一人茶髪の少女は裏通りを歩いていた。
今ノレンはトキと別れて買い物をする為に来ていたのだ。
ココはこの町で一番でかい市場!早速買い物だ!
…あ〜でも盗賊は買い物って言ったら裏通りしかないんだよな〜
………ってそういえば俺のこと言ってなかったよな?
俺はノレン・ロアーク!
この話の主人こ………あれ?言っちゃ駄目なんスか?すんませーん!
まぁいいや。歳は……多分17くらいかな?んで!ここは重要!!
俺は女ですから!
『俺』とか、口調は男だけどさ!
…一応職業は盗賊★職業上での名前はシャルだ。
てか子供ん時憧れだったんだよ。盗賊。
しかも自分で言ったらあれだけど、一応田舎の方じゃ光電の姫君と言われるくらいの実力だからな!
都会に出て来たら盗賊ランクBだったけど……下から二番目・・・
そうそう、俺が起きた時にいた奴も言っとくよ。
あいつの名前はトキ。(っつっても本当の名前かどうか疑わしいんだけどな。)
職業は盗賊。ランクはSS。盗賊の中で一位二位を争う程の実力だ。
まぁだから俺があいつの所に詰め掛けて、盗賊にしてもらったんだけど・・・。
歳は21くらいじゃねぇの?知らねぇけど。
まぁこれくらいかな?じゃあ俺はこの辺でそろそろ…
ノレンの読者様への説明を終えた所に急に、誰かが話しかけてきた。
「誰に頭ん中で説明してんだよ。馬鹿か?」
!…トキ!…そうか!こいつは読書術……いや、読頭術かな?
「読心術だ」トキが言う。
……そうか読心術が使えるんだった!
「ってうっせぇよ!こうしねぇとこれ読む人わかんねぇじゃん!しかもさり気に心を読んで教えるなよ!」
「あぁ…?そんな事言ってもいいのか?俺教えるの辞めるから?」
「すんませんでした!トキ様!!以後気をつけます!」
頭を下げたノレンがちらっとトキの顔を見ると、凄く馬鹿にしたような顔をしていた。
くっそぉ〜!むかつく!なんなんだよ!!・・・・・・はっ!ミスッタァ!!読まれてるんだったぁ!
「…まぁ今回は見逃してやろう……。…ところで、今回の獲物は―紅く煌く石―だそうだ」
「ふ〜ん………紅く煌く石ねぇ……綺麗そうだな…………って!そんな石は1つしかねぇじゃねぇか!」
何故か見る見るうちに顔が青ざめていく俺。
「あぁそうだ、紅く煌く石―別の名を…人の命を吸う悪魔、だ」
―これは、石に伝わる伝説です―
《昔、ある王様は魔導師にこの世を支配できる、
絶大な力を持つ石を作れと命じました。
それから何年か経ってようやくその魔導師は石を完成させました。
王様は早速それを使って他国との戦争に使いました。
するとその石を使ったとたん戦力は増大し、他国を簡単に潰す事が出来ました。
王様は石の力の虜になり、
ついに今まで勝てそうに無かった大国にまで戦争を持ちかけてしまいます。
勿論石を使ってです。
結果は自国の圧勝でした。王様の国にはもう敵はいません。
すべての敵を滅ぼしてしまったのです。
しかしとんでもない事件が起こります。
ある日、王様はうっとりと石を眺めていました。
すると聞こえるはずのない声が石の中から聞こえてきたのです。
『もっと…もっと。足りない、まだ足りない。血が足りない』と。
王様は怖くなり、石を手放そうとしましたが、その石は手から離れませんでした。
ついに石は暴走し始めました。まず王様を喰らいました。
次に城にいる兵達を喰らい、
そして城下にいた人々までをも喰らいました。
城周辺が人の血で真っ赤に染まった頃、
石は満足したのでしょうか、元の紅い石に戻っていました。
そんな恐ろしい事件から何十年か経ち、
また国ができて戦争が始まりました。
そして皆は石の存在を知ってしまうのです。
勿論国々は競うように部下達に取りに行かせました。
しかし取りに行かせたものは皆帰ってきません。
そう、彼等は皆石によって喰われてしまったのです。
その時、昔の悲劇を知る青年がこれ以上昔の悲劇を繰り返してはならないと、
石を奥深き洞窟へと封印をしました。
それ以来、戦争は無くなったと言われています。》
ちょっと待って?本当に俺達がこれを盗みに行くの?!
「え〜!俺いやだよ!そんなの取れても死ぬじゃん!しかも取って王様は戦争に使うのか?!」
「まさか、そんな訳ないだろ。………考えてみろ、今まで戦争が無かったのは石が封印されていたからだ。
それが今見てみろ、戦争だらけだろう?つまり封印は解かれてしまったという事だ。
だからその石の封印を解いた者から石を奪ってまた封印するんだ。
………まぁ別にお前に取りは行かせないさ、ただついて来ればいい」
「よかった〜♪取れとか行ったら俺逃げるよ?」
「逃げる前に俺が殺す。どうせそんな弱い奴は盗賊になる資格は無い」
「あいかわらずひでぇなぁ」
俺はふざけたように呟いたが、実際はトキが言った言葉で、ピシっと身が凍ったような感触が体を巡っていた。
本気でトキを怖いと思っていた。